手の中に包んで

 朝起きると蛾が腹を見せて死んでいた。部屋の中に充満した画材の石油のにおいが死に至らしめたのだろう。

 

 あの時、私が蛾に触れて手の中に包んで外へ逃がしてあげればよかった。

 

 長い話をした。話をし過ぎると知らず知らずのうちにその人を変えてしまいそうなので、なるべくそんなことにならないように、話過ぎないようにしようと思った。

たちこめる部屋

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そこに居たければ、ずっとそこにいればいいよ。

 

 

 

冷たいひと

 冷たいひとばかり。苦しくなってしまう。

 

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 彼はわたしの絵なんてみない。自分のことばかり。

 

 

 

 あたたかいかはわからないが、同胞のように、遠いところでつながっているかのようなあの人と話をしたい。

向日葵の切手

 いつも朝に通る道に咲いている美容院のヒマワリが目につかなくなった頃に、向日葵の絵柄の切手を貼って手紙の返事を書いた。本当は八月に返事を書くつもりだったけれど、返事が来たのは九月だったのだ。

 

 「どうして俺たちこんなに話せるんだろうね。」「おしゃべりだからじゃない」「うーん」理由なんて無いほうがいい。入り口で足を洗っている。

 

 突然の雨に傘をさした。手紙を書いていると、天気を気にするようになる。なるべく雨の日には投函しないようにする。晴れのうちに届いてほしいからだ。夏とも秋ともいえないような雨が心地よい。

右側通行

 昨日、都内某所を歩いていた時のこと。「うるせえよ、うるせんだよ」とある男性が後ろを歩く人に向かって怒鳴った。隣を轟々と電車が走って行く。大きな音だった。「誰が右って決めたんだ、ばかやろう、左歩けよ、バーカ。くそ、誰が右って決めたんだ」男性はそう言って人並みに逆らって右を歩いて行った。混んだ歩道橋、みんな左側通行だった。

 

 なにかが少しずつズレているようなそんな場所だった。

 

 歩道橋を降りたところで男性はホームレスのお婆さんに声をかける。

29年間、赤バスありがとう

 昨日月を見て、あの月は何番目の月なのだろうかと考えた。

 

 今日は相変わらず変な日だった。いつもと違うこともしてみた。やっぱりあいも変わらずという感じだった。けれどもとても良い人で、外に出る時間を得たのは大きいことだったし(話をすることは相手が時間を割いてくれてはじめて成立する ほんとうにありがたい事だ)、自分の描くものは絵をふだん描かない人にも伝わるのだと思うと少し心強い。

 

 苦しさがへらないのは、“ひみつ”のせい。抱える秘密が多いから一向にこの苦しさは減らず自分の意識のなかでヒダイしていく…。

それは嘘

 言葉にすると、それは

 

 夏の夕立ち

 憂い

 倦怠

 少々の苦しさ

 漠然とした恐怖

 過去

 言えないこと

 

 そんなもの達になるけれど、それは嘘なんだ。

 

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